わんちゃん、ねこちゃんのストレスを最小限に
当院では、去勢・避妊手術に際して積極的に痛みをとることを実行しています。痛みをとることで、術後の回復が早いだけでなく、わんちゃんやねこちゃんのストレスも最小限に抑えることができます。痛みをとることは、わんちゃんやねこちゃんの安心、安全につながるのです。
手術前・手術中・手術後といった、すべてのタイミングで、注射や飲み薬などを使って継続して痛みを抑えていきます。また、手術の種類によって、鎮痛剤に加えて局所麻酔を使用するなど、さまざまな方法で対応いたします。わんちゃんやねこちゃんの体質や性格、飼い主様の状況などを考慮し、さまざまな選択肢をご提供しています。
手術後は、日帰りもしくは当院に一泊することになりますが、わんちゃんやねこちゃんによっては、慣れない病院にいるよりも普段から過ごしている自宅で休養した方が精神的に落ち着き、肉体的な回復も早くなるケースがあります。そのため、わんちゃんやねこちゃんに合わせた術後の処置や判断を行なっています。
去勢・避妊手術の重要性
去勢・避妊手術は、望まない妊娠・出産を避けるだけでなく、わんちゃんやねこちゃんの将来の病気を防ぐこと、さらには飼い主様との日常生活を快適にすることにもつながります。
わんちゃんの去勢・避妊手術で予防できる病気
性ホルモンが出続けることで起こりやすくなる病気を予防することができます。
女の子の場合
子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、卵巣・子宮の腫瘍
男の子の場合
精巣腫瘍、前立腺疾患、会陰ヘルニア
犬の避妊手術と乳腺腫瘍
避妊手術の最大のメリット乳腺腫瘍の予防に関しては、初めての発情の前に手術すれば99.5%もの予防が期待できます。1回目の発情後で92%、2回発情してしまうと74%に下がってしまいます。
ねこちゃんの去勢・避妊手術で予防できること
ねこちゃんの避妊手術も、不必要な妊娠・出産を避けるだけでなく、交尾から伝染する感染症を予防することができます。また、オスの去勢手術は、猫同士のケンカから伝染する感染症だけでなく、部屋中におしっこをかけるスプレー行動(マーキング)を防ぐことにもつながります。ねこちゃんは、一度スプレー行動をはじめてしまうと、くせになってしまうことが多いです。その結果として、家中におしっこのにおいがついて不衛生になり、飼っていく上でとても大変になります。そのため、まだスプレー行動を行なっていない段階で、お早めに去勢手術をすることをオススメします。
ねこちゃんの去勢・避妊手術で予防できること
ねこちゃんの乳腺腫瘍はできてしまうと、悪性であることが多く、気づいたときには手遅れになってしまうことがあります。しかし、避妊手術を適切な時期に行うことで、6カ月齢までなら91%の予防効果が、12カ月齢までなら86%の予防効果があると言われています。
メリットとデメリット
去勢・避妊手術には、メリットだけでなくデメリットもあります。その両方を理解した上で手術を受けることが大切です。
女の子の場合
メリット
- 望まない妊娠を防げる
- 偽妊娠の予防
- 発情時のストレスがなくなる
- 発情出血時にお世話する必要がなくなる(避妊手術を受けていない場合、約6ヶ月~1年に1回の発情出血が起こります)
デメリット
- 麻酔によるリスク(健康かつ低年齢であればリスクは低いといわれています)
- 肥満になりやすい
- まれに尿失禁を起こすようになる
男の子の場合
メリット
- 望まない交配を防げる
- マーキングやマウンティングなどの問題行動や攻撃性を抑制できる
- 発情中のメスから受けるストレスがなくなる
(去勢していない場合、発情中のメスのそばにいながら交尾できないことがストレスになります)
デメリット
- 麻酔によるリスク(健康かつ低年齢であればリスクは低いといわれています)
- 肥満になりやすい
- 問題行動や攻撃性が抑制されないケースもある
適した時期
メスは初回発情前(初回発情は生後6~8ヵ月に起こることが多いが、個体差が大きく大型犬は生後10ヵ月前後になることもある)に手術を行なうことで、乳腺腫瘍の発生率を著しく抑えられます。オスは性成熟前(6~8ヵ月齢)が良いとされています。ねこちゃんではまれですが、小型犬では、乳歯が自然には抜けずに、残ってしまうことがあります。これをそのままにしておくと、歯並びに問題が起き、口の中に傷ができてしまうことがあります。犬歯が抜けずに残った部分には、汚れがたまりやすく、歯周病の原因にもなります。去勢・避妊手術をする際に、一緒に抜歯をすることができます。適切な時期に、抜歯をするために、子犬のうちは、1カ月に1回の来院していただき、お口のチェックもしましょう。
手術の流れ
1.手術前の診察
若い子は、去勢・避妊手術以外に一緒に行わなければならないものがないかを確認します。乳歯が残っていたり、おへそのヘルニアなどがないかチェックします。中年齢6歳以上の子については、手術ができないような疾患がないかをチェックするために、細かい検査を行います。
2.手術の予約
手術ができる状態と判断した場合には、日程を調整します。手術は、午前の診察後、12時過ぎから開始しますので、11時ごろまでに来院できる日をお願いしています。
手術当日の注意事項もこの時にお話しします。手術の当日は、絶食というのが今までの考え方でしたが、最近では、絶食時間の短縮や手術前の栄養給与に多くの有用性があることがわかってきました。特に、子犬や子猫のような若齢動物や闘病中の子たちは、体に蓄えているエネルギーや栄養が十分ではありません。このような動物たちは、術前の栄養管理で必要な栄養をしっかりと補給することが、非常に重要です。
直前に食べさせて吐かないの?というご質問を受けますが、大丈夫です。液状の食事だと、食後4~5時間程度で胃は空になります。必ず、指定の液状の食事を与えてください。
3.手術当日
指定された時間に来院していただき、お預かりします。12時過ぎたら、手術を開始します。当院では、各種の鎮痛薬・局所麻酔薬を、術前・術中・術後に併用し、できるかぎりわんちゃんやねこちゃんが痛みを感じないよう務めています。痛みが出てきてから痛み止めを使うのではなく、痛む前から鎮痛薬を使用することで、できるだけ痛みを感じさせないようにしていきます。痛みは、ストレスになり、傷の治りを悪くしてしまいます。
お腹の傷は、体の大きさにもよりますが、3~5センチ程度です。傷口は、抜糸する方法としない方法とがありますが、その子の性格、生活環境に合わせて選択します。猫ちゃんに関しては、抜糸をする方法だと、エリザベスカラーをいう傷口をなめれないようにするものを首に巻かなくてはならないので、ストレスになるのでほとんどの場合、抜糸をしない方法で行います。
参考までに、抜糸をする方法としない方法の術部の写真をお見せします。
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抜歯しない方法
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抜歯する方法
4.退院
その子の状態に合わせて、日帰り、もしくは1泊をしてから退院となります。
去勢・避妊手術後の注意事項をお話します。
5.退院後の検診(傷の状態の確認と抜糸)
術後の検診は、2,3日してからと、抜糸のとき(10日後くらい)の2回来院してもらうことが一般的です。
出産・繁殖を望んでいる場合はご相談ください
初回発情時の交配は避けましょう
約6ヵ月の犬は人間で例えると中学生くらいで、まだまだ身体が未熟な時期です。この時期の妊娠・出産はなるべく避けましょう。
むやみに交配すると危険な犬種も
無計画な交配や、犬種特有の遺伝子の関係で、子犬に障害が出る場合もあります。交配は正しい知識を持って行なうことが大切です。出産希望の方は一度ご相談ください。
出産の段取りは事前確認を
出産は自宅で行なわれることも多いです。「え?病院で出産するんじゃないの?」と思ったかと思いますが、出産の際には、環境の変化などのストレスにより、陣痛が弱まってしまう場合もあります。したがって、普段の環境が一番です。事前に手順を確認することはもちろん、もしもの時にすぐに病院へ連絡できるようにしておきましょう。
複数頭増えても飼える環境を
人間とは違い、わんちゃんやねこちゃんは一度の出産で複数頭生まれることがほとんどです。複数頭産まれてから「やっぱり、こんなにたくさん飼えない!」なんてことにならないよう、出産や繁殖を行なう前によく考えましょう。